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カンラン カンラン
べた舌「 真 弥 」 H19初花 べた舌「峰昌」 H16初花 黒赤弁べた舌「千鶴」H18初花
蘭下村塾とは、吉田松陰の松下村塾にあやかって、寒蘭(カンラン)の新世界を夢見てつけた、グ
ループの 愛 称です。
薩摩の中村氏を師として、特に選ばれた両親のみを用いて種を求め、工夫された方法で、それぞ
れ が、自己の山に蒔いて、各自オリジナルな新花を夢見る、グループです。
中村氏は、17歳のときから寒蘭に魅了され、数十年前から、特に地元産の無銘の寒蘭を中心に
交 配して、十年単位を覚悟で山に蒔き、思考錯誤の結果、現在では、蒔いて3年で開花に至るもの
も出、通常の早期開花組は3〜5年で開花が見られるようです。
人工交配による山蒔きと、フラスコ蒔きとを、比べた場合、早く、大きく、丈夫な苗ができることで
す。
赤素舌「 喜久姫」H19初花 桃無点舌「千代 」H18初花 桃紅素舌「甑州」H16(鹿屋フラスコ)
山蒔きは、数種類を同時に蒔くため、苗の段階では両親の特定が出来ませんが(開花すると概
ね可能らしい)、絶対的に良花のみを両親に用いているという信用があれば、かえって何が咲くかと
いう楽しみがみて,山採り苗と同じような楽しみがもてます。 特にフラスコ蒔きと異なることは、山採
り苗と同じように、同じリゾームの苗が他に多数存在しない単品物であることです。
また、ひとつのフラスコ苗は限定された種(しかも自然と異なりフラスコに入れる段階から人の手
で億分の1に限定されており、希少種の可能性が抹殺されてしまっている)のため、ほとんど同じ花
が開花することが分かってきており、希少種を求めるマニアにとって、急激に人気がなくなることが
予想されています。
山採り苗は、自分で採取したものや、山採り仲間から手に入れたもの、特に信用できる筋の商
人から取得した苗等は産地や由縁が明らかですが、最近、多量に流通している有名産地の苗は、
山の事情と由縁から疑わしいものが多く、他の産地のものや,おそらく人工交配の山蒔き苗ではな
いかと思われます(実生とは、実から生まれたという意味ですから、交配も自然種も同じです)。
それらの苗から開花した花をみると、花粉親は良花を用いているが,母木は普及品が用いられて
いる という感じがする程度の花しか咲きませんでした。デイスカスの場合と同じで交配は母木が大
事で特に形状は母木の影響が強くでるので、いい母木を用いないと良花は期待出来ません。
青「吉法師」H15初花 紅「弁天」H15初花 青「東山の月」H17初花
蘭下村塾のメンバーは、薩摩を中心に2〜30人程おられますが、私のような福岡や大阪の趣味
者 もいます。私は、我が庭に種を蒔いて、庭採りを楽しみにしています。
平成21年8月・鹿児島の借山地で、種を蒔いて1年半後に6本出芽で初採取
最大の楽しみは、毎年年末に,各会員宅持ち回りで、家族ぐるみで行なわれる忘年会で、得がたい
スーパー美味しい芋焼酎に出会えることです(蘭の副産物です)。
本稿掲示の写真はいずれも蘭下村塾の作出によるもので、東洋蘭展示大会(博多スターレーン)
に出展し、炎摩は平成15年の初花で、峰昌は平成16年の初花で、家昌は平成17年の初花で、いず
れも場を賑わしていました。
寒蘭の魅力ある新花の出現は、寒蘭の趣味の世界の活性化をもたらすものと期待されますの
で、人や地方レベルにとどまらず、広く各地、各人に普及することを期待して,だれでも簡単にで
きる、オリジナルな特花の作出と育成を呼びかけたいと思い、ご紹介させて頂きました。
また、鹿児島県では条例で寒蘭などの山採りが禁止されたように、自然野生植物の保護が求め
られる現代において、人工の交配種を山に蒔いて寒蘭を採取し、一部は山に返せば、社会的ニー
ズにも対応出来ることになると期待されます。
なお、人工交配種の山蒔きは、かなり前から、土佐、徳島、、肥前等で行なわれていたようで
す。また、フラスコ蒔きによる技術の改良も進み、大隈、徳島、人吉の業者等の苗も販売されてい
ますし、交配によるものとみられる寒蘭が(自然種として)かなり出回ってきているようです。いずれ
にしても、今後、各地からの新花の発表が楽しみです。
青「島津」H18初花 紅無点系舌「紅千代」H18初花 青「家昌」H17初花