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ーカベルネソーヴィニヨン検証ー
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明野・登美ケ丘・鳥居平・菱山畑・七俵畑の葡萄畑風景
美味しいカベルネソーヴィニヨンを作る条件の検証

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明野・登美ケ丘・鳥居平・菱山畑・七俵畑の葡萄畑風景


明野・ミサワワイナリーカベルネ垣根仕立。他に畦仕立、レインカット、石埋、排水管等多くの工夫検証が見受けられた。
この西側の高い山のおかげで、雨雲が遮られ、日本有数の長い日照時間と乾燥した空気(フェーン現象か)が得られるとのこと。

スズランワイナリーの畑も、近くにありました。 肥沃な赤土土壌でした。
  

明野のキュべミサワ売店・試飲コーナー     
  

   登美ケ丘・サントリーカベルネ垣根仕立て  富士山がよく見える、日当たりと風通しが良い、傾斜地でした。
  

鳥居平と菱山畑は、勝沼東部の傾斜地で、隣り合わせでした。主に甲州が、小規模農家により、棚方式で栽培されていました。


勝沼七俵畑・山梨ワイナリー。カベルネ畑。決して広い場所ではありません。
近辺の昔から存在する土壌そのままで、できるだけ自然農法で行なう主義だそうです。
やや、あぜ作りで栽培されているようです。雑草も、土壌の状態を良くしているようです。




美味しいカベルネソーヴィニヨンを作る条件の再検証


各産地の土地
カベルネの代表的産地とも言うべきボルドー左岸は、表面は殆ど石ころ状態です(しかし、その下は肥沃な堆積土壌らしいです)。
日本のキュべミサワプライベートリザーブやイケダカベルネシラーそしてスズランカベルネを生んだ明野は肥沃な赤土でした。
山梨カベルネやウトマニアを生み出した七俵畑は肥沃な畑土でした。
世界でトップを争うカベルネの産地と言われているオーストラリアのクナワラは肥沃な赤土です。


クナワラのテラロッサ(赤い土)・葡萄の根は、幾層もの赤土層をくぐって石灰岩層の手前でユーターンしている。

 

従来の発想
シャルドネ等の白葡萄やピノノアール等は、ブルゴーニュの実績から、石灰岩等の岩石が最適地と思われています。
カベルネ等のフルボディ系についてはどうでしょうか。
ボルドー左岸は石ころ状態なので同じ条件でしょうか。岩石等のミネラルを葡萄が吸収して、各種フレイバーを持つに至るということでしょうか。
しかし、最近、ニコラさんに聞いたところによると、ボルドー左岸も肥沃な粘土質の土壌ということです。
もともと、沼地であったので堆積土壌で、表面の石ころは川の上流から流れてきて表面を覆ったものとのことです。
それで、合点が行きました。

各地の当たり年の検証
明野やクナワラそしてナパも肥沃な土地です。
クナワラは深層部が石灰岩で構成されていますが、クナワラや明野そしてナパも、培養地域が赤土である点で共通しています。
ナパは粘土質ローム(小石・砂が混ざった火山灰性赤土)ということです。いずれも肥沃な土壌です。
七俵畑で美味しいカベルネができた2005年の葡萄は、畑の葡萄が一斉に色づいたそうです。
明野で美味しいカベルネができた2009年の気象条件は、夏に日照りと高温が続き(干ばつ状態)、秋の最低温度が低かったということでした。
世界的に評価されているクナワラの表土は赤土ですが、クナワラの醸造家によると、葡萄は土地を選ばない、
最適な気候条件と管理体制が欠かせない、また、ワイン醸造の基礎は全て畑にある、ぶどう作りが大事であると言います。
明野の醸造家も同じようなことを言われてました。
なお、これまでの日本の最高の当たり年は2009年です。欧州もいい年です。

園芸の基本に帰る発想の転換
私好みのフルボディワインを生み出すミネラルいっぱいのコクのある葡萄は、肥沃な土地から栄養分を吸収しなければならないとうのが園芸上の発想です。
明野やクナワラの肥沃な赤土がこれを実証しています。
この基本と、ボルドー左岸の土壌そして明野やクナワラの当たり年の気象条件を組み合わせると、
コクのあるワイン、あるいは糖度の高い葡萄を生み出している条件は、フルーツトマトを生み出す条件と同じようです。
基本的に、植物は、生育段階においては、水、太陽(日照)、肥料は絶対不可欠な条件です。
しかし、果実の糖度を増すには、一つには水切り状態による糖度の凝縮(フルーツトマト化)で、
もう一つは急に低温状態に会うことよる、自己保存のための栄養の確保(防逆流=秋の紅葉現象)のようです。
ボルドーの石ころも、水切り効果と反射熱効果等により葡萄の糖度を上げ、高品質のカベルネソーヴィニヨンを生み出したのではないでしょうか。

一方、ブルゴーニュのような石灰岩盤層は、過去に海底であった石灰岩層(珊瑚礁や貝殻堆積層)が隆起した土地で、
日本にはいたるところにあるはずです(ヒマラヤの山間部に貝殻の化石が見つかる所以です)。
しかし、石灰岩性の土壌を持つという山口等中国地方のワイナリーから美味しいカベルネソーヴィ二ヨンが作られているかというと、そうでもありません。
ブルゴーニュで作られている美味しいワインの代表はシャルドネやピノノアールですので、これらは石灰岩質の土壌が合うのかもしれません。
しかし、カベルネソーヴィニヨンやメルローそしてシラー等は土壌は肥沃な方がよく、
夏期に高温、乾燥する日が続き、秋の最低気温が下がるという気象条件と、
醸造家が、葡萄生産家と認識を共有して、まめに葡萄を見守り、各手当のタイミングを失わないという管理体制が大事なようです。

葡萄は糖度が増す程、いいワインが出来ると思います。
糖分はアルコールに転嫁し、ワインのコクを生み、作り手による各種の個性を生み出すことが可能になります。
ワイン=葡萄の当たり年とは葡萄の糖度が上がる気象条件が揃った年にやってきています。
クナワラには、完熟する前に収穫するという変わったワイナリーがありますが、これは、完熟葡萄の糖度を嫌っているのではなく、
完熟すると失われる、スパイシーさ、渋みそして青臭さ等の各種の成分を持ったまま収穫、醸造し、
それらの個性的なフレイバーを持たせたまま、樽やビンの中で熟成させて、比較的軽めの、食事に合うワインを醸造する為だそうです。
しかし、これは例外で、殆ど多くの一流ワイナリーは、葡萄を完熟させて、高級ワインを作出しています。

今回、見学させていただいた明野では、畑の一部で、土壌の中に岩石を引いたり、暗渠を用いて水はけをよくしたり、
畝を用いたりする工夫が為されていましたが、これらは、水切りすなわちフルーツトマトを作育する環境づくりに似ているようです。

明野は、葡萄の糖度が増す条件たる、肥沃な赤土、西側の高い山が西から来る雨雲を遮ることによる日照時間の多さと乾燥する気象、
そしてワイナリー醸造家による緻密な管理等が揃っています。そこに、夏の、高温と日照り、秋の最低温度の低温化が加わると、
いわゆるボルドー左岸が証明するごとく、葡萄の糖度が増して、高品質な葡萄になるということでしょうか。

日本における特に著名な葡萄の産地
カベルネソーヴィニヨンの明野、城が平、メルローの塩尻(桔梗が原、岩垂原を含む)等は世界に誇れる固有の産地と言えると思慮します。

 
訪  問  記

今回、美味しいカベルネソーヴィニヨンを世の出したことがあるワイナリーに、メールで畑見学の申し込みをしていたところ、
二つのワイナリーから快く受諾の返事を頂きました。


中央葡萄酒の三澤農場
そのうちのひとつ中央葡萄酒の三澤農場(明野)を、最初に訪問しました。
既に、上記に紹介しているとおり、様々な工夫がなされていました。
醸造責任者の方(娘さん)は、欧州に出張とのことで不在でしたが、
三澤さんに、二日間、明野の畑や他の山梨のワイナリーを案内していただきました。
サントリーの登美ケ丘農場
広大な畑は、風通しや日当たりがよい、高原の傾斜地にありました。
土地は、赤土ではなかったようです。
美味しいワインが作られていますが、もう少し渋みが欲しいと思いました
土壌のせいでしょうか。
甲府のワイン屋さん
前回も訪れた、ビンテージ、お宝ワイン専門店です。
カベルネの美味しいのはありませんかと尋ねたら、奥から、最後の1本という山梨ワイナリー(クラムボン)の2005カベルネが出てきました。
これは、想定外、しかも探していたものだったので、びっくりしました。
いろいろな醸造家や農場そして歴史の知識が豊富で、多くの有益な情報を得ることができ、お宝ワインを12本仕入れました。
甲府のレストラン
名前を忘れましたが、三澤さんと山本会長と、ワインを飲みならが(会長はなぜかハイボール)、ワイン談義をしました。
鳥居平と菱山の甲州畑
鳥居平は、中央葡萄種の契約農家など、小さな農家が所狭しと甲州を作っている所で、勝沼東部傾斜地にありました。
北隣に。美味しい「グランキュべ甲州」を生み出しているイケダの契約農家がある菱山畑があり、
上隣に、美味しい甲州「もてなし」を生み出している東夢ワイナリーの畑がありました。
「甲州」は、今だに、棚方式で作られています。生産量は増すでしょうが、糖度が上がらず、その欠点を補えないのではないかとの疑問が湧きました。
2013に明野の垣根方式で作られた「甲州」が欧州で金賞を受けましたので、やはりという感じです。
ただ、菱山の棚方式で作られた「甲州」のグランキュベやセレクト白は、これに負けていませんので、なんとも・・・。
山梨ワイナリー
ご返事をいただいたもう一つのワイナリーです。
勝沼のど真ん中で、狭い畑ながら、カベルネソーヴィニヨンの栽培に成功している(七俵畑)、貴重な実証例です。
野沢さんに、親切に、七俵畑や、地下の貯蔵庫(お客さんのワインの預かり所)等を、ゆくりと案内していただきました。
あじろんのピンクスパークが美味しかったので、ひと箱注文しました。
当たり年のカベルネソーヴィ二ヨンは、かすかな期待も外れて、やはり在庫がありませんでした。

ビストロミルプランタン
三澤さんのご案内で、野沢さんご夫婦と訪れました。
ここのいいのは、グラスワインでも、地元の美味しいクラスのワインが飲めるところです

シャトーメルシャン
前回お休みだったので、今回は寄らせていただきました。
メルシャンさんの高級クラスは、結構試飲しかつ保管しているので
こでしか買えないという、カベルネフランを、試飲用に、購入しました。
イケダワイナリー
前回のカベルネシラーの御礼を言いに寄らせていただきました。去年の2011に続き、グランキュべ甲州2012が新発売されていました。
カベルネないしカベルネシラーを、作っていただきたいです。
池田さんは自社畑を持たず、契約農家からの仕入れですが、醸造力は日本のジョルジュルーミエと言っても過言ではないと思います。
丸藤ルバイヤート
前回お礼に伺いましたが、大村さんは不在でした。まだ、新商品は出ていませんでした。
ここでは、コンスタンスに最高品質のメルローとシャルドネを購入することが出来ます。
シャトー勝沼
駅への帰り路で、時間つぶしに、立ち寄りました。大きなスーパーみたいで、観光客で賑わっていました。
特に、興味を引くワインはなさそうでした。

無添加ワインが売りとのことでしたが、酸化防止剤が入ってなくて美味しいワインに出会ったことはありません。

今回山梨で、美味しいことが確認されているワインに、ワイナリーでしか買えないワインを若干加えて、50本仕入れました。
よって、比較検証のため、クナワラのカベルネソーヴィニヨンや新世界のプレイアム物を少し取り寄せますが、
フランス特にボルドー左岸の仕入れは卒業することにします。


後日談・クナワラのカベルネソーヴィニヨンを試飲した結果、価格が10倍するボルドー左岸よりも美味しく、
私の予想が当たっていました。世の流れは変わるもので、研究、努力する者が、安住するものを追い抜くのは、世の習いです。
日本ワインに限らず、世界のワインは、ここ数年、加速度的に進化(変化)しているようです。